【読者レビュー】川島蓉子著「TSUTAYAの謎」【要約】&【感想】
みなさんはTSUTAYAを利用したことがありますか?
みなさんも、おそらく1度はTSUTAYAでCDやDVDあるいはコミック本を借りたことがあるのではないでしょうか?
私は、CD、DVD、コミック本いずれも借りまくってきました。
転勤で異動になれば、新しい赴任先でTSUTAYAを見つけ、そこで新しく会員登録をしたりもしていました。
どうしても、その街にTSUTAYAがない場合は、地元に帰ったときに地元のTSUTAYAで借りて、また1週間後に地元に戻ったときに返却するということまでやっていました。
何度目かの転勤で、その街にあるTSUTAYAで新しく会員登録をしようとしたとき、以前作っていたTカードが使えるということが分かりました。
ですが、既にその時は、私の思い込みで古いTカードは破棄していたのです。
なので、結局新しくTカードを作ってもらいました。
私にとって、TSUTAYAは完全に生活の中の一部になっていました。
そして、私は今でもTSUTAYAでレンタルを続けています。
1年ほど前になりますが、TSUTAYAに行って驚いたことがありました。
それは完全セルフレジが導入されていたことです。
今ではスーパーマーケットで一部セルフレジが導入されていたり、ユニクロでも完全セルフレジが導入されたりしています。
ですが、私の知る限り、一番早くセルフレジなるものを導入したのはTSUTAYAでした。
まだまだセルフレジが一般的になっていない時期からTSUTAYAではセルフレジが導入されていたのです。
「四国の地方都市でありながら、とても革新的で先進的なことをする会社だな」
と驚きを感じました。
そのとき、私は店員さんに見守られる中、ドキドキしながらレンタルCDのバーコードの読み取り、お金の支払いなどの手続きをしました。
それと、TSUTAYAの店員さんといえば、青いデニムシャツにジーンズという服装で仕事をされています。
昔から若々しくてお洒落な印象を感じていました。
ある日、私がTSUTAYAに行くと、見た目で60代くらいの女性店員さんがTSUTAYAのレジカウンター内で働いていたのです。
もちろん、青デニムシャツにジーンズでした。
「若いなあ。」
「頑張っているなあ。」
「この歳になっても若い人たちと同じに働いているのか。」
などと、色々と強い驚きや感動を受けました。
セルフレジにしろ、60代の女性店員さんにしろ、私は家に帰ってから、思わず妻に驚きやドキドキ感を話したほどです。
本書を読むことで、私がこれまで経験してきた驚きの謎が分かってきました。
それは、増田宗昭さんというTSUTAYAの創業者がどういう人物なのかが分かってきたからです。
「なるほど、増田さんならこういうことをするのも納得できるな。」
「成功に溺れず、世の中の新しい動きに敏感に対応して、常にチャレンジしている。」
「昔から今でも変わらず、方針はブレずに一貫しているのだな。」
そのような印象を受けました。
今から30年ほど前の話ですが、私の実家の近所には、個人で経営されているレンタルビデオ店が何店かありました。
TSUTAYAはそれらのお店の後から出店していったのです。
私が高校生くらいまではCD、ビデオのレンタルはまだまだ盛んでした。
その頃はまだインターネットもなければ、DVDもなかったような時代です。
個人でされているレンタル店だけでなく、地元だけのレンタルチェーン店も次々と出来ていました。
ですが、今、残っているCD等のレンタル店は、私の知る限りTSUTAYA以外、全てなくなってしまいました。
生き残っているのはTSUTAYAだけなのです。
このことだけでも増田さんの経営能力の高さを感じることができます。
TSUTAYAだけにとどまらず、増田さんの挑戦はどんどん続いていきます。
増田さんは、書店、図書館、商業施設、家電店の4つの業態について、お客さんからの視点で見直しをして、まったく新しい枠組みに作り変える必要があると考えてきたというのです。
そして、実際に、蔦屋家電という家電屋を始めたり、蔦屋書店という大型書店を作ったり、佐賀県武雄市という地方の自治体から依頼を受け、図書館経営のお手伝いまでやってしまいます。
著者の川島さんは、書店、図書館、商業施設、家電店、いずれの業態も
「生活提案がなされていないものばかり」
「ワクワク感がない」
「終わった業態」
とまで言っているものばかりです。
ですが、増田さんからすれば、だからこそまったく新しい枠組みに作り変える必要があるというのです。
これまでのやり方を変えて、新しく違った角度からお客さんに対するサービスの提案をすることで、まだまだやれることはあるというのです。
これまでの企業は、効率のみを重視してきました。
その結果、モノは市場に溢れ、価格競争になり、安く商品を手に入れられるようになりました。
ですが、どこのメーカーも同じような商品になってしまい、個性というものが薄れていきました。
結果として、商品を買うのであればリアル店舗に行く必要はなくなってきています。
何か商品を買うのであれば、アマゾンや楽天といったネットショップで買う方が、目当ての商品を探すのも早いし手間もいりません。
そして、何より安く買うことができます。
わざわざ店まで出かけて行くことを考えると、着替えをしたり女性ならお化粧をしたり、歩き、自転車、バイク、車、公共機関を使っての移動もあります。
手間暇もかかりますし、ガソリン代や交通費がかかる場合もあります。
私は、最近、家の近くの家電店にランケーブルを買いに行きました。
一応、前もってルータの説明書やインターネットでランケーブルの規格を調べて店に行きました。
ですが、私の知識は10年近く前で止まっていたこともあり、調べてもよくわからないところが少しありました。
店に着くと、私は、40代後半から50代前半くらいの男性店員に声をかけて、私が欲しいランケーブルについて尋ねました。
その男性店員は、私の質問に答え、一応商品の紹介や説明をしてくれました。
ですが、私が調べてもよくわからなかったところについてははっきり答えてくれませんでした。
なので、私はもう一度、店員さんにその点に絞って尋ねてみました。
ですが、店員さんは、最初と同じ回答を機械的に繰り返すのみで、私の質問に対してははっきりと答えてくれませんでした。
「あなたが必要な商品なら、これ買っておけばいいですよ。」
という感じのやや突き放したような冷めた対応でした。
私は、とりあえずお礼を言って、教えてもらったランケーブルのコーナーにしゃがみ込みました。
そして、店員さんから説明を受けたことをもう一度自分なりに整理し直しました。
そして、自分なりに商品について理解してから、商品を選んで買いました。
「こんな対応なら、アマゾンや楽天に書いてある商品の説明文をじっくりと読んだ方がマシじゃないか。」
「ネットで詳しく調べた方が、自分の知りたいところを詳しく知ることができたのではないか?」
「わざわざ店まで足を運んだのに、無愛想な上に、不親切な対応までされたのでは、割に合わない。」
「時間を無駄にした。」
という強い不満が残りました。
私は、それ以来、買い物はネットでする方が断然いいと強く思うようになりました。
そして、たいていの買い物はアマゾンや楽天でするようにしました。
増田さんは、モノを通して生活提案をすることが大事だといいます。
そのためには、今のインターネットが発達した社会の中でも、リアル店舗の存在は必要だというのです。
ネットの世界では、商品の値段や性能を知ることはできます。
ですが、リアル店舗では、その空間にある商品や周りの風景など、お店にある全てのものからいい物や楽しいと思うものを感じてもらうことができるというのです。
つまり、お店側が用意した生活提案の空間を肌で直接感じてもらうことができるというのです。
確かにこういったことは、ネットの世界では味わうことはできません。
わざわざそのお店まで行って、商品を見たい、商品に触れてみたい、空間を味わってみたいとお客さんに思わせることができるのであれば、リアル店舗が存在する価値は十分あると思います。
私も、増田さんが手がけたお店というのなら、わざわざお店まで行って店の中の様子を見てみたいです。
増田さんは創業したときから「世界一の企画会社」になることを目指しているそうです。
企画の本質というのは、世の中にないアイデアや発想を生み出して、それを形にしていくことだといいます。
そして、そのことによって、多くの人たちに幸せや豊かさを感じてもらうことだというのです。
私は、本書を読んで、ペイパルの共同創業者でもあるピーターティールが著書の「ZERO TO ONE」の中で
「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」
という考えと増田さんの考えには共通するものがあるように感じました。
これからは、ますます個人の個性が注目されていく時代になると思います。
周りの動きに流されることなく、自分で自分に対しても、自分に合った生活提案をしていくことが必要になってくるのではないかと思います。