【読者レビュー】菅原洋平著「頭がいい人は脳を運動で鍛えている」【要約】&【感想】

みなさんは、運動をしていますか?

 

私は、毎日している運動があります。

それは気功の体操です。

気功教室で教わった体操で、その名も「ぷるぷる気功」と言います。

 

とてもゆるいネーミングですよね。

名前はとてもゆるいのですが、この気功体操を日本に広めてくれたのは、中国のとても有名な気功師の先生なのです。

その先生は、全日本気功師会の会長である張永祥先生です。(以下張先生)

ユーチューブで全日本気功師会を調べると、張先生がやっているぷるぷる気功を見ることができます。

 

私は、毎日ぷるぷる気功を50分ほどやっています。

そのうち5分ほどは、瞑想の時間も入っています。

このぷるぷる気功ですが、動きはそれほど激しくありません。

ですが、思っている以上に汗をかきます。

冬場はいいのですが、夏場はけっこう汗だくになります。

 

私が気功を学びたいと思ったきっかけは、気功がうつ病に効果があると聞いたからです。

たまたま家の近くに張先生から気功を学んだお弟子さんが気功スクールを開いていたことも私にとっては好都合でした。

本を読んだりユーチューブの動画を見たりすることでも、気功がどのようなものか学ぶことはできます。

ただ、実際に「気」というものを体験するためには、気功師に対面で教えてもらったり直接施術をしてもらう必要があります。

 

気功や武術などは、体験、体感することがとても大切だと私は思っています。

畳水練という言葉があります。

実際にやってみて体験をしなければどんなものか分からないし、現実の場で学んだことを使えないので意味がないということです。

私は気功スクールに通うことで、「気」というものに直接触れることができたことは、とても良かったと思っています。

 

当初、東京にある張先生の気功スクールに通うかと考えたりもしました。

そのようなことが可能か張先生の気功スクールにメールで問い合わせもしました。

地方から東京にある張先生のスクールに通うコースもあるとのことでした。

ですが、スクール代金や旅費といったお金の問題もあります。

そして、一番の理由は、当時、私の体調は良くなかったので、1年近く東京に通い続けるのは体調的にかなり不安があることを妻とも話し合いました。

そういったことで、東京まで張先生の気功スクールに通うことは断念しました。

家の近くの気功スクールでは家族割引というサービスもしており、夫婦で参加すると一人分は無料になりました。

そして、3歳の娘と妻と3人で家の近くの気功スクールに毎週通うことになったのです。

 

気功は、動作も難しくなく、広い場所も必要ありません。

思い立てば、すぐにその場で始めることもできます。

そんな手軽さもあってか、スクールを卒業してからも1年以上経ちますが、ほぼ毎日ぷるぷる気功を続けています。

 

著者は、脳リハビリテーションを専門とする作業療法士です。

本書は、最新の脳科学の研究や著者が働く脳リハビリ現場での経験を踏まえて書いてくれています。

 

健康な神経は、太く長い幹を持っていて、たくさんの枝を伸ばしているそうです。

一方、元気がない神経は、ひょろひょろと細く短い幹で、枝の数も少ないそうです。

そのような神経に栄養を与えるタンパク質があります。

それが「脳由来神経栄養因子」(BDFN)と呼ばれるものです。

このBDFNは、私たちの脳内にある神経が健全に働くためになくてはならない栄養です。

このBDFNが、私たちの日々の学習や行動を支えてくれているのです。

 

このBDFNは、ストレスによって減ってしまいます。

そうなると、神経の幹は痩せて、情報を伝達する意欲もなくなってしまうというのです。

 

私は、このことが体感として分かります。

私が2年前にうつ病になり寝込んでからの状態が、まさにBDFNがストレスによって激減した状況だったといえるでしょう。

心療内科に通い薬を飲み、だいぶ元気になってきた今でも、完全に元の状態には戻っていません。

少し散歩の距離や時間を増やしたり、家事の量を増やしたり、土日に4歳になる子供の遊び相手をしたりすると、ガクッとエネルギー切れを起こしてしまいます。

 

みなさんも徹夜で勉強したり、激しい運動をして疲れたことはあると思います。

例えば

1 夜中遅くまで試験勉強をした。

2 ランニングをした。

3 階段で5階以上の階を登った。

みなさんもこのようなことをして、疲れた経験があると思うのです。

私も元気な頃はどれも経験しました。

 

ですが、うつ病になってから感じる疲れというのは、元気な頃に感じていた疲れとは「疲労感」や「疲労の質」が全く違うのです。

この「疲労」の違いを言葉で伝えるのはとても難しいのです。

私もどのように言えば疲れの違いをきちんと相手に伝えることができるのかずっと考え続けてきました。

ですが、なかなかいい言葉が見つからないのです。

仕方がないので、妻などには「うつ病になってからの独特の疲労感」などといって、これまでの疲れとは違うという説明をしています。

 

私たちは精神的ストレスを受けると、自分の免疫システムで自分の海馬を攻撃してしまうそうです。

実際に、うつ病の人の脳画像を見ると海馬は痩せているそうです。

痩せた海馬を太らせるためには、神経に栄養を与える必要があるというのです。

 

実はこのことは、今、私が通っている心療内科で先生から言われていることと同じなのです。

診察時に疲れやすい状況を先生に話すと

「まだ、栄養が足りていませんね。」

と言われました。

栄養と言われても、どこに栄養を与えるのだろう?

とずっと不思議に思っていました。

そんな私の疑問にも科学的な説明がつきます。

 

うつ状態を改善するためには、どのようにするのがいいのでしょうか?

以前は医学的にゆっくり休むことが重要だと言われていたそうです。

ですが、今ではその逆で、うつ状態の改善には体づくりから始めることが普通になっているそうです。

 

なぜかというと、休んでいても症状が改善しないからです。

その理由としては、神経に栄養が届けられないからだというのです。

ここでもう少し神経の栄養であるBDFNの働きについて紹介しておきます。

主な働きは3つあります。

  1. 神経の成長
  2. 長期記憶が増えたり、学習能力を改善してくれます。
  3. 神経栄養伝達
  4. 神経細胞が増えていくことを促進させます。
  5. 神経保護作用 
  6. 神経の幹である軸索が損傷してしまうのを抑えてくれます。

ラットの実験では、運動をした方がBDFNが増加する可能性があることが分かったそうです。

また、抗うつ剤を飲んで、運動も同時に行うと、BDFNが増加することも明らかになっているそうです。

抗うつの効果は薬よりも運動の方が大きいとも考えられているそうです。

 

では、具体的にどの程度の運動をすればいいのでしょうか?

それは、歩いたり、軽い筋トレをしたり、掃除機をかけるような運動でいいのです。

つまり、日常的に歩いたり、家事をこなすだけでも十分なのです。

そして、これらの運動を週に3日、30分程度行えばいいというのです。

「それぐらいならやれる」という人は多いのではないでしょうか?

 

私の場合ですが、うつ病といってもどこか脳が怪我をしているような感じがしていました。

先ほど紹介したBDFNの神経保護作用の働きを知って

「まさに私はこれに当てはまっているのではないか」

と感じました。

私も今では、とりあえず起き上がれるようになりました。

外にも出られるようになりました。

お店にも入れるようになりました。

人とも会話ができるようになっています。

 

ですが、1時間も人と話したりすれば、後から「うつ病になってからの独特の疲労感」に襲われます。

数時間後にグーっと疲れがきて起き上がれなくなり寝込んでしまうのです。

 

脳のエネルギーはアデノシン三リン酸(ATP)という物質です。

そして、このATPの作られ方は歳によって違ってくるというのです。

 

20歳代までは、糖分を燃やして瞬発的に大量のエネルギーを作ることができるそうです。

ところが、30歳代になるとこの方法は使われなくなっていくというのです。

替わって出てくるのがミトコンドリアによってエネルギーを作る方法です。

ミトコンドリアは、私たちの細胞の中にある小さな器官のことです。

このミトコンドリアが酸素を使ってATPを作ってくれるのです。

人は運動をするとき、多くの酸素を取り込むのでミトコンドリアがより活発に働いてくれます。

特に、持久力が要求される運動をする場合、それに適応するためにミトコンドリアも増えるというのです。

30歳から40歳代の脳と体にとっては、運動するということはいいことずくめなのです。

 

みなさんは、呼吸について「運動をしている」という感覚はあるでしょうか?

実は、呼吸というのも筋肉が行っている運動になります。

そして、呼吸は私たちの脳の働きと深く関係しているというのです。

 

人は不安になると呼吸が浅くなります。

それは、「不安になるから呼吸が浅くなる」のでしょうか?

それとも、「呼吸が浅くなるから不安になる」のでしょうか?

 

答は、「呼吸が速く浅くなるから不安な感情を抱くようになる」と考えられているそうです。

 

みなさんも、深呼吸をしたら気持ちが楽になったという経験はないでしょうか?

呼吸が深くゆっくりになれば、不安な気持ちは鎮まるのです。

つまり、感情に振り回されない脳を作るためには、呼吸をコントロールすればいいのです。

 

ただ、心の動きに直結している情動性の呼吸は自分で制御することができません。

では、どのようにして情動性の呼吸をコントロールすればいいのでしょうか?

人間の自律機能は、観察することで安定するという特徴があるそうです。

例えば、血圧が高い人が血圧を測り観測を続けていると、血圧が下がってくることがあるそうです。

 

呼吸にもそのことを応用すればいいのです。

例えば、スピーチをするために人前に立ち緊張したとします。

そのときも、呼吸を無理にコントロールしようとしないことです。

また、呼吸が速いとか遅いといったことに注目するのではなく、ただ呼吸の動きを観察することが大事だというのです。

 

運動といっても「日常生活をする」というレベルのものばかりです。

これなら多くの人が、今すぐにでも始められるのではないでしょうか?

ほんの少し、体を動かすことや呼吸をすることに意識を向けてみてはいかがでしょうか?

それだけでも、運動の効果を実感し、より高い効果を引き出すことができるようになると思います。