渡邉格著「田舎のパン屋が見つけた腐る経済」について

みなさんは、パンは好きですか?

 

今回の本は、パン職人として働く筆者が、パンとは関係がなさそうなマルクス経済学にからめて

「パンを作ることって何なのか?」

について書かれています。

 

そもそも働くってどういう意味があるの?

パン屋はどのようにして、儲けを出しているの?

パン屋という仕事は、世の中でどのようにして仕事が成り立っているの?

よく聞く「天然酵母」と「イースト」はどう違うの?

マルクス経済学ってなに?

などについて、筆者の体験談をもとに、とても分かりやすく書いてくれています。

 

パンは、今から約4000年~5000年前のエジプトで作られたのが最初と言われています。

しかも、パンができたのは、たまたまうっかり1晩、小麦粉の生地を放ったらかしたことがきっかけだそうです。

それは、放ったらかしている間に、無数の「菌」がもたらす「発酵」という働きによるものなのです。

 

例えば、「酵母菌」は、糖分を二酸化炭素とアルコールに分解してくれます。

「麹菌」は、デンプンをブドウ糖に分解し、タンパク質をアミノ酸に分解して旨みをだしてくれます。

「酢酸菌」は、アルコールを酢酸に分解してくれます。

「乳酸菌」は、糖類を乳酸に分解してくれます。

これらの「菌」がもたらしてくれる恩恵が「発酵」と言われるものです。

 

著者のパン作りにとって、「田舎」というのは、かけがえのない意味をもっています。

それは、「天然菌」がすくすくと生きていける環境があるからです。

古民家の古い木材には、化学物質が使われている心配がありません。

なので、その土地で昔から生き続けている菌にとっては、とても住みやすい環境になっているからです。

 

天然酵母パン」というのは、空気中でふわふわしていたり、作物にくっついたりして、自然の中であらゆるところで生きている色々な種類や性格の酵母菌を使って作るパンのことです。

それに対して「イーストパン」というのは、たくさんいる「野生の酵母」の中から、パンを作るのに向いている酵母を選び出して、それだけを人工的に増やして作るパンのことです。

 

パン作りには小麦などの作物が必要になります。

それを厳しい自然の環境の中で作ってくれている生産者の方がいます。

そういった生産者の方に、尊敬の気持ちと感謝の思いを込めて正当なお金を支払い、作物を買います。

いただいた素材に丹精を込めてパン職人がパンを作り、お客さんに正当な値段で出来上がったパンを販売していきます。

このように、地元で取れた農産物を使ってパンを作り、それを地元の人たちに食べていただくという地域の「食」と「環境」と「経済」をまとめて豊かにしていくことを目指していくというわけなのです。

 

ところで、私もパンは大好物です(笑)

特に、パスコの「しっとりやわらかぶどうパン」は最高に大好きです(笑)

どれくらい好きかというと、現在進行形の話なのですが、約8か月ほどほぼ毎日食べ続けています。(笑)

それでも飽きることがありません。

場合によっては、1日に2個食いすることもあります。(笑)

私にとってはパスコのぶどうパンは、とても幸せな気分にしてくれる最高のアイテムなのです。(笑)

あのパン生地の柔らかさ、パンの大きさ、パンの表面のザラザラ感、パンとレーズンの香りと歯ごたえ、それらが絶妙にバランスがとれているのです。

他社のぶどうパンではダメなのです。(美味しいのですが。)

 

みなさんは、パン屋が儲かるようにするためにはどのようにすればいいと思いますか?

 

営業時間を増やす。

従業員の働く時間を長くして、もっと多くのパンを作ってもらう。

パンをたくさん売る。

パンの原材料を値段の高い、無農薬で自然の物にこだわらず、農薬を使って大量生産された安い原材料に変える。

これらは簡単にできることで、それらをすれば、がっぽり稼ぐことができるようです。

著者のパン屋では、もちろんこれらのようなことはしません。

まして、自然栽培で作物を作ってくれている生産者の方たちは、自然の生産力を守り、自然を育みながら作物を育ててくれているわけです。

こういった「生命の守り手」である生産者の方たちから原材料の値段を下げるように注文をつけることは、自分の手で生命を育む自然を壊すようなものです。

 

私たちにとって、安く食べ物が買えるということは、嬉しいことかもしれません。

ですが、どうしてそんなに安いのでしょうか?

品質が高く、安全な食材を作るには、どれくらいの手間暇や費用がかかるものなのでしょうか?

そういったことを、御飯を食べる前に考えてみるのもいいかもしれません。

 

ようやくマルクス経済学の登場です。

例えば、雇われている労働者が、たくさん働いてたくさん儲けを出したとします。

ですが、せっかくたくさん働いてくれた労働者の手元には、儲けに見合ったお給料は支払われず、儲けのほとんどは経営者の懐に入ってしまいます。

これでは、いくら労働者がたくさん働いても、金銭的に豊かにはなれず、経営者だけがどんどんお金持ちになっていくだけです。

経営者だけが、儲けを独り占めするのはおかしいというのが、マルクス経済学の言わんとするところです。

一生懸命働いた労働者が、金銭的に豊かになるためには、この仕組みをなんとかするしかありません。

そのためには、労働者がたくさん働いて儲けを出したのであれば、働いた分だけ労働者に給料を増やしてあげればいいのです。

 

ふつうのパン屋では、従業員の給料に売上の3割ほど、パンの原材料代に売上の3割ほど費用がかかっているそうです。

ですが、著者のパン屋では、従業員の給料に売上の4割ほど、パンの原材料代に売上の4割ほどを使っているそうです。

なので、お店の儲けはほとんどないそうです。(笑)

ですが、お店が赤字になっているわけではありません。

ただ、必要以上の儲けを追求することはしていないということなのです。

ですから、明日も変わらずパンを作り、お店を続けていくことができているのです。

 

私の知り合いに埼玉県でベーグル専門店を経営している方がいらっしゃいます。

先日、その方から、お店で作られているベーグルを冷凍宅配便で送っていただきました。

自然解凍でもいいのですが、電子レンジで20秒温めるだけで、簡単に美味しくいただくことができます。

実は、これまでベーグルを食べたことはなかったのですが、宅配で届けていただく前にたまたまスーパーで、1個100円のチョコベーグルを見つけたので、買って食べてみました。

少し固めのチョコパンかなという印象でした。

元々、ベーグルに対するイメージは、プレーンのものしかなくて味気がなく、半分に切ってサンドイッチみたいにして食べるしか方法がないという思い込みもあり、食べようと思ったことすらありませんでした。

 

今回、初めてベーグル専門店のベーグルを食べることになりました。

農薬不使用の国産小麦や天然酵母を使い、その他の食材にも有機農法の果物を使って作られた超本格派のベーグルです。

食感はかなり弾力があり、すごくもちもちでした。

とにかく弾力が強いのです。

「うまい!」というより「美味しい~」という感じなのです。

噛めば噛むほど味がする感じです。

香川県外の人が、初めてさぬきうどんを食べるときに感じる、麺のコシの強さに似ているかもしれません。

正直、ハマりました。

私が住んでいる市内で、ベーグル専門店はないのか調べたところ、2件ほどありました。

これまでにもお店の前辺りをよく通ってきましたが、全くお店の存在に気がつくことができませんでした。

ベーグル専門店を見つけようという目標を持ったことで、これまで見えていたはずのものが見えるようになったのです。

まさに、盲点でした。

そして、パン好きであるはずの私が、こんなに美味しく体にもいいベーグルというパンがあることに気がついていなかったのも盲点だったといえるかもしれません。(笑)

専門店のベーグルは、スーパーで売っているベーグルの倍以上の値段がします。

ですが、体にもいいし、お店の売上にもつながるし、パン屋さんに自然の食材を提供してくれている生産者の方の売上にもつながることを考えれば、そんなに高い値段ではないのかもしれません。