岸見一郎、古賀史健著「幸せになる勇気」について

「嫌われる勇気」という本を知っていますか?

ベストセラーになったので、知っている方も多いかもしれませんね。

この「幸せになる勇気」は「嫌われる勇気」の続編になります。

ルフレッド・アドラーという20世紀に活躍した、オーストリアの心理学者の考えについて書かれています。

 

アドラー心理学の考えを、実際の生活でどのように使っていけばいいのか、どう実践していけばいいのかを重点に置いて書かれています。

その中の1つに、教育のことがあります。

アドラー心理学には「課題の分離」という考えがあります。

例えば、勉強でいうと、勉強をするのは子供の課題であって、親といえども子供の課題に口を挟んではいけないという考えです。

そもそも、家庭や学校での教育は、なにが目標でしょうか?

教育を施すことによって、子供たちにどのようになってほしいのでしょうか?

アドラー心理学では、教育の目標は、子供が一人前の大人になること、つまり「自立」することなのです。

子供が社会的に自立するためには、子供が知らないことを、知っている周りの人が教えてあげる援助が必要になりますよね。

それが教育ということなんです。

例えば、将来大人になってから交通事故に遭わないように、赤信号と青信号の意味や、自動車の運転技術を教えてもらいますよね。

また、幸せに生きるため、学校や家庭やクラブ活動などの共同体の中でどのように生活すればいいのか、他人とどのように関わればいいのか、どうすればその共同体に自分の居場所を見つけることができるのかということも学んでいく必要があります。

このようなことは、必ずしも書物からだけでなく、他人と関わる対人関係の中で学んでいくことが多いですよね。

大勢の他人に囲まれる学校という環境は、家庭以上に大きな意味を持つ教育の場といえるでしょう。

それでは、教育をするといっても、具体的にどういったことから始めればいいのでしょうか?

アドラー心理学では、学級の場合、まずは先生が子供たちに対して尊敬の念を持つことだとします。

これは親子であれ、どのような対人関係でもいえることです。

親といえども子供のことを尊敬し、「教える側」の人であっても、「教えられる側」の人のことを敬うことです。

では、尊敬するとはどういうことでしょうか?

それは、この世界にたったひとりしかいない、かけがえのない「その人」をありのままに見ることです。

そして、目の前の他人を、変えようとも操ろうともせず、何かの条件をつけるのではなく、「ありのままのその人」を認めることです。

そして、誰かから「ありのままの自分」を認めてもらえたなら、その人は大きな勇気をもらえることができるのです。

尊敬することは、他人を勇気づけることもできるのです。

先生が生徒を尊敬することによって、クラスの生徒たち一人ひとりが「自分が自分であること」を受け入れ、自立に向けた勇気を取り戻すことができるのです。

では、実際に具体的な行動として、どのようにすればいいのでしょうか?

そのためには、他人が興味を持っていることに関心を寄せることです。

例えば、子供たちがよく分からない遊びを楽しんでいたとします。

いかにも子供向けのおもちゃに夢中になっているような場合、先生の目から見て、それがどんなにくだらないと思うような遊びだろうと、まずはそれがどんなものか理解しようとすることが大切なのです。

先生自身が自分もその遊びをやってみて、場合によっては子供達と一緒に遊ぶことです。

あくまで「遊んであげる」のではなく、自分自身がそれを楽しむことです。

そのときはじめて、子供たちは自分たちが認められていること、子供扱いされていないこと、ひとりの人間として「尊敬」されていることを実感することができるのです。

これは子供だけにいえる話ではなく、あらゆる対人関係で求められる、尊敬するということの具体的な第一歩なのです。