新井紀子著「AIvs教科書が読めない子どもたち」について

みなさんは、AIのことを知っていますか?

 

まず、私が、AIと聞いて思いつくのは、将棋や囲碁の世界で、トップクラスの棋士がコンピュータに負けたという話です。

それ以外では、スーパーやツタヤのレジで、セルフレジが導入されたりしていますよね。

 

そもそも、AIというのはどういうものなのでしょうか?

AIとは、Artificial、intelligenceの略語になります。

日本語の意味としては、「知能を持ったコンピュータ」という意味になるそうです。

 

そこで、私がイメージするAIというのは、「ドラえもん」やスターウォーズに出てくる、「C-3PO」や「R2-D2」です。

彼らは、ロボットでありながら、人間のように自分の意思で動いたり、話したりしています。

ドラえもんは、どら焼きまで食べています。(笑)

 

ですが、今回、本の中で紹介されているAIというのは、私のイメージとは少し違いました。

AIというのは、コンピュータのことです。

コンピュータというのは、計算機のことです。

そして、計算機は、計算することしかできません。

つまり、ドラえもんやC-3PO、R2-D2というのは、今の段階では、あくまで漫画や映画の中だけの話ということなのです。

なので、AIが自分の意思を持って、人類を攻撃してくるようなこともありません。

安心してください。(笑)

 

ドラえもんやC-3PO、R-2D2のようなものが本来の意味でのAIというものです。

一方で、将棋ソフトがプロ棋士に勝った話や、お掃除ロボット「ルンバ」などは「AI技術」と言われているものです。

つまり、今、世間でAIといわれているものは、とても優秀な機械の技術でしかないのです。

もしかすると、AIという言葉を聞いて、パッと思いつくイメージとしては、「ドラえもん」のようなAIと「ルンバ」のようなAIが、区別されることなく一緒のものとして見られていないでしょうか?

なので、この2つのことは、きっちりと分けて考えておかないと、話がよくわからなくなってしまいます。

 

著者は、実は、「AIはまだどこにも存在していない」といいます。

その理由としては、「基本的にコンピュータがしているのは、足し算、引き算、掛け算、割り算という計算しかしていないから」ということです。

人間の一般的な知能と同じレベルの知的活動を、足し算、引き算、掛け算、割り算だけで表現できるとは到底思えないからです。

確かに、今のところ、世界中を探しても、ドラえもんやC-3PO、R2-D2はいませんよね。

 

著者は、2011年に「ロボットは東大に入れるか」というプロジェクトを始めました。

「東ロボくん」と呼ばれるロボットが、東大受験にチャレンジし、AIはどこまでのことができるようになるのか実験をしたわけです。

最初の頃の東ロボくんの成績は、散々な結果に終わりました。

ですが、2016年の段階では、東大合格まではいかなかったものの、MARCH(明治大学青山学院大学立教大学中央大学、法政大学)や関関同立関西大学関西学院大学同志社大学立命館大学)といった難関私立大学の一部の学部に合格する可能性を80パーセントになるまで成長することができたのです。

 

スマートフォンに目的のお店までの行き方を尋ねると、すぐにお店までの道を教えてくれます。

ですが、スマートフォンの中にあるAIは、意味を理解して答えているわけではありません。

あくまで「意味を理解しているようなふり」をしているだけなのです。

AIは、聞かれたことに応じて「計算」し、答を出しているにすぎないのです。

コンピュータは計算機なので、こういったことを、足し算、引き算、掛け算、割り算だけを使ってやっているわけなのです。

それも、すごい話だなと思います。

 

人間であれば「私は、あなたが好きだ」と「私は、カレーライスが好きだ」という言葉の意味の違いは、簡単に理解できますよね。

ですが、AIに、この2つの文章の違いを理解させることは、とてもハードルが高いことなのです。

コンピュータはあくまで計算機です。

なので、物事の意味を理解するということができません。

そのため、東ロボくんも、最初に比べると成績は上がったのですが、東大に合格するまでには至っていないのです。

 

AIには出来ないけど、人間にはできることには、どのようなものがあるのでしょうか?

それは、コミュニケーション能力や理解力が求められること、介護の仕事のように柔軟な判断力が求められる肉体労働です。

AIには、「物事の意味がわからない」という弱点がありますよね。

なので、AIに負けないようにするためには、AIにはない応用力や柔軟性、枠にとらわれない発想力を身につけていけばいいわけです。

 

では、私たちは、AIにはできない読解力や柔軟性、発想力といったものを十分に持っているといえるのでしょうか?

実は、今の日本の中学、高校生は、中学校の教科書に書かれていることを正確に読み取ることができていないのです。

これでは、読解力や柔軟性について考える以前の問題ですよね。

 

では、物事の意味を理解する力、つまり、読解力をつけるためには、どのようなことをすればいいのでしょうか?

残念ながら今のところ、科学的な方法は見つかってはいないそうです。

その代わり、著者は、自分の経験から、読解力をつける予感的なヒントは見つけているようです。

それは、本をたくさん読んで知識を詰め込むことではなく、1冊の本をじっくりと何回も読み込むことです。

そして、その本に書かれている内容をしっかり、きちんと理解するということです。

デカルトの「方法序説」という本があります。

本自体は、そんなに文量はなく、薄い本です。

ですが、内容はとても難しいです。(笑)

著者は、この本を大学生時代から20回は読んできたそうです。

今でも、分からない部分はあるそうですが、著者の科学的方法のほとんどを、「方法序説」から学ぶことができたということです。

同じ本を20回も繰り返し読んできたのには理由があります。

著者は、自分ではない赤の他人が、何年もかけて書いた本を理解するためには、その本を書くのにかかった時間の2倍はかかっても当たり前だと考えていたからです。

 

みなさんも、いきなり、デカルト方法序説のような難しい古典を読み始めることはありません。

まずは、手近に手に入る本や気になる本、なんとなく興味があるくらいの本から読み始めてみてはいかがでしょうか?

私も、本はたくさん読みますが、著者のこの考え方を聞いて、おもわず「なるほど~」と思ってしまいました。

実は、私も、「方法序説」を1回、読んだことがあります。

確かに薄い本です。

ですが、内容はとても難しく、とても1回読んだくらいでは、内容を理解することはできませんでした。

方法序説以外にも、私は古典といわれている本を何冊か読んできました。

ですが、だいたいどの古典の本も、書かれている内容が難しく、ほとんど理解することができませんでした。

古典と言われている本は特に、その本を書いた人の何倍もの時間をかけて読み込んでいかないと、とても理解できないと身をもって実感しています。

著者は、あくまでも個人的な意見としてですが、著者の身近な経験から、読解力は大人になってからでも向上させることができるという考えを持っているようです。

 

著者は、これからどのような未来がやってくると予想しているのでしょうか?

それは、働く人が足りなくて困っている状況があるのに、世の中には、失業者がたくさん溢れているというおかしな状況です。

どうしてそのように変なことになるのでしょうか?

それは、せっかく、新しい仕事が生まれても、その新しい仕事に人間がついていけないからです。

では、私たちは、これからどのようにすればいいのでしょうか?

 

ヒントは、糸井重里さんの「ほぼ日刊イトイ新聞」(ほぼ日)という商売のやり方です。

ほぼ日では、手仕事で作った洋服やセーター、本などが販売されています。

面白いのは、売られている多くの商品が、「在庫なし」になっていることです。

これは、すぐに売り切れてしまうほど、少ない量しか作らないし、作れないからなのです。

そして、ほぼ日の商品からは、作った人の人柄や、ストーリーを感じることができるのです。

そういったところに、ほぼ日で商品を買うお客さんは人間的な魅力を感じているわけです。

 

重要なのは、物事の意味というものを、自分なりに、とことんよく考えてみることです。

あるいは、生活の中で不便に感じていることや、困っていることを探してみることです。

「不便」や「困っている」ことの原因を突き詰めて探していけば、その途中に、何か新しい仕事のヒントを見つけることができるかもしれません。

たとえ、小さなことでも、それが必要とされることであれば、これからのAI時代を生き残っていくきっかけにできるわけです。

 

私は、コーチングスクールに通い、コーチングを学んでいく中で、感じたり、わかったことがあります。

それは、自分も含めてですが、その人が本当は何がしたいのか、何が好きなのかということを、普段から明確に意識して生活している人は少ないということです。

私は、コーチングを学ぶ前までは、仕事に追われ、ただ忙しく同じような毎日をノルマのようにこなしていくだけの生活でした。

仕事では、しんどくて嫌なことがたくさんありました。

ですが、それでも、定年まで同じような毎日が続いていくことを信じて疑うことはありませんでした。

完全に、自分の感覚が麻痺していたということです。

思考停止状態になっていました。

 

ですが、コーチングを学ぶ中で、じっくりと時間をかけて自分の本音と向き合うことができました。

そして、自分が本当にやりたいことは何なのか、本当は何が好きなのかということを突き詰めて探し続け、考え続けました。

そうすると、今の自分やこれからの自分にとって本当に必要なもの、大事なもの、別になくても構わないものが、だんだんと見えてくるようになりました。

私にとって、一番大事なものは、妻や子どもです。

家族を大事にするなんて、そんなの考えるまでもなく常識で当たり前じゃないか、と思われるかもしれません。

私も、そんな「常識で当たり前な」考えは持っていました。

ですが、「しみじみと実感できる」までには本当に分かっていなかったのです。

 

これからは、その人にとって心の底から、ウソ、偽りなく、本当に嬉しいとか楽しいと思える物や人と付き合っていくことに、お金では買えないような価値を感じるようになるのではないでしょうか。

それは、機械的なものではなく、人間的な温かみがあるものだと思うのです。

そうすると、いくらAIが発達しても、人間が活躍できる余地は、まだまだ十分、たくさんあるのではないでしょうか。